西条真二さんの漫画、鉄鍋のジャン、第1巻「血と水と油」に出てくる紅焼鹿筋を作りました。
鉄鍋のジャンは僕の大好きな料理漫画です。僕は中華料理が大好きなのですが、それは鉄鍋のジャンの影響も大きいです。いつかこの漫画に出てくる料理を実際に作ってみたいなと思っていました。
そんな折、ある中華食材屋さんで鹿筋(ロチン)を見つけました。鹿筋とは鹿のアキレス腱ことです。実物を見るのは初めてでしたが、それが何かすぐにわかりました。鉄鍋のジャンに出てきていたからです。
日本ではまずお目にかかれない食材との出会いに心が躍りました。そして「鉄鍋のジャンのあの紅焼鹿筋を作ってみよう!」と思いました。

こちらが鹿筋。漫画の見た目そのままです。スルメイカの干物のようにカチコチです。これ1本で2000円しました。高いですが、それよりも鹿筋に対する興味が勝りました。
お店の説明によると、「筋骨を鍛え、体内の老廃物を除去する作用があり、関節痛などに良い。戻して軟らかくなってから煮込み料理にして使用する。」らしいです。
コラーゲンですので、筋骨や関節は丈夫になるでしょうが、食物繊維ではないので老廃物除去の効果はないんじゃないかな?と思いました。

裏側。爪のようなものがついています。

ゲンコツ部分。

軟骨かな?

調理していきます。いきなり油泡(ユーパオ)はハードルが高すぎるので、普通に水煮で戻すことにしました。
小鍋に収まるよう、出刃包丁で半分に切りました。密度の高いコラーゲン繊維なので頑丈で粘りがあり、簡単には切れなかったです。
沸騰した湯に入れ、すぐに火を消して放置します。

あれ?見た目が少しかわりました。毛がついてますね。皮付きだったようです。中心の白い芯みたいなのが可食部なのでしょうか?

水を入れ替え、生姜、ネギ、日本酒を加え、30分煮ます。

煮ました。

えっ!全然違う形になりました。あなた誰?

30分の茹でこぼしを5回繰り返しました。

ブルンブルンに戻りました。柔らかいシリコンのようです。

反対側。最初の姿からは想像もつかない形になりました。

皮と軟骨を除去し、可食部を取り出しました。ブルンブルンで、これ以上の戻しは必要ない気がしますが、漫画の内容に従いもう少し戻し作業をします。

8時間蒸します。最初はラップをしていましたが、コラーゲンを膨潤させるには水が必要ですし、ラップをしない方が臭みが抜けると思ったので、ラップは外しました。
8時間というと物凄く長いように感じますが、何回かに分けてもよいし、家事をしている傍ら、とろ火で放置しておけばよいので、そこまで大変でもないです。

8時間蒸して冷蔵庫で冷やした後の状態です。蒸したときに水滴が入ってスープ状になりました。また8時間蒸したことで鹿筋は更に軟らかくなり、トロトロになりました。ここまで軟らかくする必要はなかったように感じます。

冷蔵庫で冷やしたら固まりました。ひっくり返しても流れません。コラーゲンを煮溶かして冷やしたのでゼリーになったんですね。

ニンニクの素揚げを作ります。ネット上で唯一つ見つかった紅焼鹿筋に揚げニンニクが入っていたのと、佛跳牆にも入っていたので。

こんがり揚がりました。これだけで十分美味しそうです。

椎茸を炒めて入れます。椎茸もネット上で唯一見つかった紅焼鹿筋に入っていました。

鹿筋とそのスープ、揚げニンニク、椎茸を煮ます。味付けは日本酒、醤油、中華スープの素です。

ちょっと味見をしてみたら鹿筋に結構な臭みがあったので、生姜、ネギ、ゴマ油を追加しました。紅焼鹿筋の情報は殆ど無いので勘で突き進みます。

器に盛りました。紅焼鹿筋の完成です!
さて、お味は・・・。
うまく・・・ないです・・・。
臭い!鹿筋に獣臭のような生臭さがあります。何度も茹でこぼすのはこの獣臭を抜くためだったんですね。
食感はトロトロで、溶けかけた雑煮の餅に似ています。やはりここまで軟らかくしなくてもよかったと思います。蒸しの工程はいらないと思います。
食感はいいので、この獣臭さえなければ、美味しい料理になるのですが、凄く勿体ないです。ニンニクと椎茸は美味しかったですけど。
とりあえず、ずっと謎だった鹿筋がどんなものかわかってよかったです。今回は漫画のレシピになるべく忠実に作ってみましたが、次回はもう少し自分の感覚に従って作ってみようと思います。
ジャンのモットーは「料理は勝負」だそうです。僕は「料理はワクワク」かな?未知の食材、新しい調理手法、遠い外国のレシピ、というのに挑戦するワクワク感が好きです。