市販のカレールーを使わずにスパイスからカレーを作ります。スパイスから作ると香りが鮮烈でとても本格的になります。作り方は簡単なのでスパイスさえあれば家庭でも十分できます。スパイスはインド食材店で安く購入できます。

フライパンにスパイスとサラダ油を入れます。サラダ油は多めに入れます。ここ大事です。カレーは油も重要な構成要素なのです。
スパイス:生姜(生)、唐辛子(粉)、クミン(粒)、シナモン(スティックをハサミで細かく切る)、ターメリック(粉)、クローブ(粒、少なめ)、コリアンダー(粉)、グリーンカルダモン(粒)、黒胡椒(粒)
普通はニンニクも入れますが、今回は後で冷凍飴玉ニンニクを入れるので、ニンニクは入れませんでした。黒胡椒は後で思いついて追加しましたが、ここで入れておけばよかったと思います。
スパイスはなるべく粒の方が良いです。粉にしてないので香りが逃げていません。また噛んだ瞬間、香りが弾けるのが良いからです。粒のスパイスを使ったカレーは、まるでオーケストラのフィナーレです。様々なスパイスが弾けては消えていきます。

弱火にかけ、スパイスを低温で揚げます。この工程をテンパリングといいます。スパイスの香りを油に溶かし込む工程です。
テンパリングの仕方には色々な流儀がありますが、僕は粉も含めて全てのスパイスを油に入れて弱火で加熱するだけです。生姜やニンニク等の生スパイスも一緒に入れておいた方がよいと思います。水分が過昇温を防いでくれます。
テンパリングは小さめのフライパンを使ってスパイスを油でひたひたにしてやるのがよいと思います。大きなフライパンに少量しか中身が入っていないと温度ムラができやすいです。

大きなフライパンにスパイス油を移し具を炒めていきます。普通は玉ねぎのみじん切りを炒めるところから始めますが、今回は冷凍飴玉ニンニクを使うのでその工程は省略します。
冷凍飴玉ニンニク、人参、トマトを加え炒めます。人参はたまたま冷蔵庫にあったので入れました。

トマトは炒めるとすぐに溶けます。

トマトが完全に溶けました。さらに過熱を続け水分を飛ばし鍋底が見えるまで煮詰めます。この工程があるのでカレー作りはテフロンパンの方が良いです。テフロンコートがないと多分こげ付きます。

茄子と牛肉を入れました。牛肉は素炒めして冷凍したものをいつもストックしています。今回はそれを解凍して使いました。

蓋をして茄子が柔らかくなるまでじっくり火を通します。最後に蓋をとり水分を飛ばして濃縮します。色づいた油が分離したら完成です。油の中に具や水分があるという状態にすると美味しくなります。

できました。
濃厚なトマトの旨味と鮮烈なスパイスの香りがありとても美味しいです。
このような本格カレーは普通の日本式カレーとは色々と異なります。一番の違いは、本格カレーは炒め料理であるという点です。できるだけ水分を飛ばし油中水滴コロイドとなるように仕上げるとぐっと本格感が増します。
このような油とスパイスを大量に使う料理はインド、ネパール、四川辺りに多いです。高温多湿の地域です。
高温多湿の地域は雑菌との戦いです。油を大量に使い、具を油でコートしたり、油に沈めたりすることで雑菌の繁殖を防いでいるのだと思います。
また高温多湿の地域では冷蔵庫のない時代には食材が傷みやすく苦労したことと思います。多少傷んだ食材でもスパイスの強い香りでごまかして食べやすくしたのだろうと思います。
スパイスの香り成分は油に溶けやすい性質があります。大量の油とスパイスが結びついてカレーが生まれたのでしょう。
インド料理にはだし汁(スープストック)という概念がないそうです。それは多分、水ベースのだし汁は腐敗しやすく保存がきかないためだと思います。インド料理ではだし汁のかわりをトマトがつとめています。トマトはグルタミン酸やアスパラギン酸等の旨味成分を豊富に含むので、だし汁のかわりになります。
カレーは、油、スパイス、トマトの三位一体により生まれた奇跡の料理です。そしてこの奇跡をもたらしたのが高温多湿という気候であるというのが面白いです。
更に、カレーに欠かせない唐辛子とトマトがアメリカ大陸原産であるという点も興味深いです。アメリカ大陸再発見以前のカレーはどんなものだったのでしょうか?今のカレーを知ってしまっている私たちにとっては物足りないものかもしれません。
カレーは奇跡に奇跡が重なり生まれた凄い料理です。